ハンバーガーとは

ハンバーガーとは、と書いても別にハンバーガーとは何ぞや、と講義するつもりではありません。
10年程前に帰国した際、横浜で或るバーガー・チェーンの店に入った時の事です。
トレイに敷いてある紙に絵入りで、ハンバーガーの名の由来が印刷してありました。

例のハンバーガーはドイツのハンバーグ (英語読み。 日本ではハンブルグですね)で発祥したという奴です。
早速、マネージャーに問い質しました。
「ここに、ハンバーガーはドイツのハンブルグから始まったとありますが、何を基にしたのでしょうね?」
「そのような通説になってますし、この紙は本社の方で印刷して、店の方に送られてくるものですから。
本社の方でキチンと調査している筈ですが。」
「ハンブルグで始まったからハンバーガーというのは出来過ぎてませんか?  大体ドイツはソーセージの国でしょう?
ハンバーガーはアメリカのものですよ」
「そう言われればそうですが。 本社からそのように言ってきてますし。 何か問題が?」

「暫く前、ニュー ヨーク・タイムスの地方版の一ページ殆ど使って、
ハンバーガーが何処から始まったのか、記事になってましたよ。 
ハンバーグという町があって、そこでのお祭りの時にステーキの肉が足りなくり、
間に合わせに挽肉を使ってステーキの代用にしたら、これが評判良くて、
ハンバーグのステーキだというのでハンバーガーとなったんだ、というような事でしたが。」
「そうは言われても」
「ニュー ヨーク・タイムスの記事は信用できませんか?」
「そういう訳ではないのですが」
「それでしたら何かの時に本社に伝えて下さい。」

その後、どうなったのかは知りません。
アメリカかぶれのバカのたわごとと片付けられてしまったのでしょう。 その後何回か帰国していますが、まだハンバーガーはアメリカから発祥したという話は聞いていません。
ホット・ドッグとハンバーガーはアメリカの食品と、皆さん理解してらっしゃる筈なんですがねえ。
さて今回このエッセイを書くに当って、もう一度調べてみようと思い立ったのです。

友人にニュー ヨーク・タイムスの資料調査係りに電話すれば、何でも教えてくれる、と言われていました。
そう言えばキャサリン・ヘッバーンとスペンサー・トレーシーが主演する 「デスク・セット」 という映画がありました。
キャサリンは出版社の reference section (照会課)のボス。
係りの女の子達は、電話の問い合わせに対し、記憶や、ありとあらゆる本からの引用で答えます。
スペンサーは新たに雇われたコンピューターのエクスパート。メイン ・フレームのコンピューターを導入し、
会社運営全てをコンピューター化しようとします。 勿論照会課もです。
すったもんだした挙句、矢張り人間も必要だと言う事になり、課の全員はクビから免れると言うお話。

それだったら私の質問なんぞ朝飯前と、電話帳でタイムスのそれらしき番号を捜し、かけてみました。
そこではないとの事で、新たに貰った番号を試してみますと、延々と30秒以上も続く録音メッセージ。
簡単に言えば、宿題とかリサーチの質問が多く、そんな事は他の方法で捜してくれ、
経費の事もあり、これ以上は続けられないのでサービスは止めた、
なお昔の記事については索引の本を出版しているから図書館に行って調べてくれ、との事。
残念でした。
そう言えば日本でも、昔は夏休みの終わりに、気象庁に日記の宿題をサボった子供達からの電話が殺到したとか。
今はもうしてないんでしょうね。
村の図書館に行ってみました。 大きくはありませんが、高校のすぐ側で大学もあり、本は結構揃っています。
ここに無くても、貸出し可能な本でしたら、隣り村か、ホワイト・プレーンズにある大きな図書館から取り寄せてくれます。
残念ながら置いてあった索引書は、この数年だけ。
毎日の代表的な記事の要約が月別に、項目順に印刷されています。
詳細が必要な場合は、記事の記号を使って、図書館にあるマイクロ・フィルムでその日の新聞全てを
読む事ができます。

私の必要な記事は10年以上も前の物。 しかし、ここで諦めるのも癪です。
早速地図を引っ張り出し、近辺のハンバーグという町を捜してみました。 
ニュー ヨーク州にあるのは一つ。 しかもフェア・グラウンド (お祭り広場) の側です。
しかし場所は私の考えていたのとは全く違うエリー湖の付近。 バッファローから直ぐの所です。
ニュー ヨーク州が出している観光案内を引っ張り出してみると、エリー郡の町案内に小さく載っていました。

ハンバーガーの発祥地と書いてあるだけで、後は商工会議所の電話番号しか印刷されていません。
次の日に電話してみました。 問い合わせが時々あるらしく、パンフレットがあると言う事。
早速送って貰う事にしました。宣伝になるから、引用自由との事。 翻訳してみました。


「ニュー ヨーク州、ハンバーグでのハンバーガーの誕生について。 1885年。
1885年のハンバーグ・フェアで ( 現在はエリー群のカウンティ・フェア・・・農業祭としましょう。 農畜産物の品評会です。 
移動遊園地が来たり、おいしいパイやケーキ、手作り工芸を賞するのもここです。
俗に言われるブルー・リボン賞というのは 最優秀賞に選ばれた人には、ブルーのリボンがついたバッジが贈られる、
と言うことからです。
このフェア、今でも全米殆どの郡で、まず行われています。 パット・ブーンの映画を見た方はご存知でしょう)

そこでの屋台営業許可を持っていたフランクとチャールスのメンチェス兄弟が
真新しいガソリン・ストーブを運び込み、彼等の得意、ポーク・ソーセージのサンドイッチを作ろうとたところ、
その日、肉屋さんではポーク・ソーセージが売り切れ。
フランクは5ポンドの牛の挽肉を買い込んで戻って来ました。
早速フランクはストーブを暖め、チャールスは挽肉を平たく円形にまとめました。
味見をしてみると、もう一つピリッときません。 塩でも足りません。 
どうにでもなれと、少量のブラウン・シュガーをグリルで焼いている肉にかけてみました。 結果は上々。
このようにしてアメリカの名物はニュー ヨーク州のハンバーグで生まれ、名付けられたのです。」

下の写真は1981年コネティカット州であったカウンティ・フェアの様子

  

  

             
パンフレットの中には、1992年州議会から兄弟の遺族に贈られた表彰状のコピーと
1991年のオハイオ州カントン・デポジトリー新聞の記事が入っていました。
何故オハイオの新聞かと言うとメンチェス兄弟はオハイオの住人だからです。

記事によると 1904 年のフェアでは 3 トンの挽肉を使って、100人の従業員が 2万4000食分の
ハンバーガーを作り、売り捌いたとあります。

最初の頃のハンバーガーはオニオンをのせケチャップをかけて食べたようです。
ハンバーガーの名前は、これは何という料理かと聞かれた時、ハンバーグで最初に作られたから
ハンバーガーと名付ける、と兄弟が答えた、とあります。
この話、観光客呼び寄せの宣伝臭くもありますが、ドイツのハンバーグで作られたからハンバーガー
というのより真実味があります。
ともかくハンバーガーはアメリカの代表的な食べ物。 アメリカが発祥地でなければなりません。
(2013年 その後、様々な報道があり、現在ではセント・ルイスとかの店が発祥地だ、
との説が有力になっているようですが、私はこの街に固執します)
 


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