白紙


 ウォルフ・ポイントからイーライ迄 1  2010年5月22日   写真上をクリックすると拡大されます


少しでも目的地に近くと、ビリングスではなく、ボーズマンで車を借りる事にしました。 孫が一緒で、途中の写真はありません。
コンパクト・カーを予約していたのに示されたのは3列シートの超大型フォード4WD、冗談じゃない、と抗議、すったもんだの挙句、韓国製の小型に。

車をかりるのに、モンタナ州を時計回りに半分程回ってしまったのですから、出発は夜の11時なってしまいました。

田舎の都市ではレンタカー店は飛行場エリア。 飛行場は町の郊外、ナヴィゲーターも田舎では役にたたない場所があり、高速に乗る迄は
苦労しました。何処だかわからない場所を走っていると、天の川迄見えそうな真っ黒の空。 心細くなりますが、大型トラックの後について一安心。


2時間も走ってきつい上り坂になり、切通しを登ると突然、目の前、一瞥では見切れない、宝石をぶちまけた様な輝きが目に入ってきました。
姨捨の夜景もきれいですが、ここは距離が姥捨程無く、一軒毎の地所が広いので、大きく延びた町が丁度良い縮尺で目に入ってきたのです。
感動しました。 ああ人が住んでいる・・・こんな夜景は今迄見た事がありませんでした。  街の名前はビュート。 人口3万4000人の市です。

珍しく高速道路の夜間工事をしており、モテルを探そうかと思いましたが、此処は走ってきた90号と15号の合流点。工事中で大型トラックが溜まっており、出口が2,3箇所もある市で、しかも仮標識、何処に出てしまうか、判らない・・・未だ眠くは無い、と運転を続けました。

15号に入ると、人家の灯りがまず見えません。 ガソリン・スタンドはありましたが、モテルは見かけません。  こりゃいかん。 モテルのサインを見つけたら直ぐ降りると決め暫く走ると、 モテルのサインが二つ。 しかし、街の灯りが見えません。 とにかく降りると、最初のモテルは以前にも宿泊した事があるチェーンのもの。 チェック・インしたのは、22日の朝1:50でした。 

次の日起きてみると何と5月なのに雪・・・。 暫く様子を見たのですが、何となく明るくなってきたので8時一寸前に出発した記憶があります
モテルは税込みで109ドル、安い方でしょう。



 出る前に西の方の山では雪で危ない、と言われていましたが、こちらは西南。 まさか、と思っていました。 雪も殆どやみ、ホッとしたのですが。


       標高が少し高いと、雪が被っていますし、雲行きも相変わらず悪い。 もう5月の下旬なのですが。




                                晴れ間も出てきて一安心。                 しかし、・・・


   馬を乗せたトレーラーを曳く 4X4 に抜かれました。 110 km/時位でしょうか。 安定性は向こうの方が悪いのだから、向こうの轍の後を
          走れば安全、と決め込み、少し離れて追走する事にしました。          写真中と右: 貯水池の向こうは、雪のような・・・・・


       何となく雪が降り出してきたようです。     牛も寒そう。   4X4 はまだ見えていますが、かなり先に行ってしまいました。



  本格的に降り始めましたが、地面には積もっていません。なのに除雪トラックが走っています。 速度を60マイル程に下げます。
    4X4 はもう見えません。 2,3分走って除雪トラックを抜いたのですが、抜く間、ザーッと跳ね上げられた雪が飛んできました。
    揺れますが、確実に進行しています。完全に追い抜いてホッとして2、3秒後、突然ハンドルの反応が無くなり、左に回転を始めました。

    雪上でスピンをするのは、これが初めてではありません。
    一番危ないのはハンドルを車が向いた逆方向に回す事。 理屈としては判りますが、最も危ない行為。
    体の力を抜き、背中と頭をシートに付けます。 ハンドルは軽く握り、手の感触だけは研ぎ澄まします。
    腕に力を入れて硬く握るのはいけません。

    このままだと180度回って、追い抜いたトラックの方に行ってしまう、と思った時にスリップが緩み、中央分離帯に突入
   (ハイウエー・ポリスの想像では進入時の速度は70km/時弱)。

 この一帯は反対側車線が 10m程離れており、しかもこちらより 2m程高い。 築堤を 1m 程駆け下りると、分離帯は雑草が生えた凸凹の荒地で、
 速度が落ちたにしても(40km/時位か) このまま築堤を駆け上り、反対車線のガード・レールに激突する、と思った瞬間、上り坂に変わっていた
 為か、左に回転、下り線の築堤を下がりながら横転を始めました。

体を少し丸めます。 横倒しで止まるか、と思ったのですが逆さまになり、横においたポーチ・バッグ等が宙を飛んでます。
こりゃ車から出るのが大変だ、がその時の感想。

シート・ベルトが効いていて、体も丸くしていたので、頭の上には十分な空間がありました。 
逆さまの状態から幸いにも(?)車はゆっくりと横転を続け正位置に戻り停止。

外を見れば、上り車線の路肩に正方向になっていました。 横に 360° 前後に 360° 回転したことになります。 ドアを開けようとしましたが、
ドアの前が内側に凹み、中々開きません。
追いついた除雪トラックの運転士が急ぎ足でやってきて
「大丈夫か? 車から出られるか?」と、聞いてきました。

いざとなれば後からでも降りられたのでしょうが、「ドアが開かない。外からも引っ張ってくれ」と頼みました。
「怪我は? 意識はしっかりしてるかい?」


よく見ると、中指の甲に微かな切り傷が。それ以外、何ともありません。キーを回すとエンジンはかかります。
彼がレスキューを呼ぼうとしましたが、無線が通じず、こちらの携帯電話を試すと、通じました。
レスキューが到着。 どこも怪我してないし、先を急いでいるから」と病院行きは断りました。


次に街のポリス・カーが。 警官が 「寒いからこちらの車で、話を聞きながらハイウエイ・ポリスを待とう。」 と言いました。
警察の車の中に入るのは初めて。都会よりも重装備が必要なのか、運転席の左右からダッシュボード、天井迄、戦闘機のコック・ピットようです。
天井から下がっている速度計測器も1台ではないようですし、無線から拡声器用のマイク、その他もろもろ、機器だらけです。
助手席の方に張り出したアームにはポータブル・コンピューターが、後席との仕切りの上部には銃も。TVや映画等で見たのとは大違い。


暫くしてハイウエイ・ポリスが。 車外で説明していて判ったのは、滑り始めた所が橋の上だったという事です。
直線のアスファルト続きで、注意していても判り難いと思いますが。


その時中型(アメリカでは)の乗用車が走行車線からス−ッと来て、警官二人の前で停まりました。男が降りてきて警官に何か言ってます。
車内には家族が。私は自分の車のそばに居たので聞き取れなかったのですが、車が走り去ってから聞くと、

「彼もあそこから滑って、ここでやっと止まったんだ」
雪も止み、道路の雪も殆ど消え、不思議でした。
2m程で止まらなければハイウエイ・ポリスの車にぶつけていたどころか、どちらかの警官が怪我をしたかもしれません。


ハイウエイ・ポリスの車にも乗り込みましたが、ローカル程の重装備ではありませんでした。その後暫く待つと、トウ・トラックがやってきました。
この辺で止めときます。
大事なのは、橋の上は目で見てOKであってもスリップする事がある、スリップを始めたら、緊張せず、冷静に。

ハンドルは軽く押さえるつもりで、しかし何時でも左右に操作できるように。 気力だけは持ち続け、何が起きているか把握し続ける事、です。

速度が速すぎたのでは、という疑問はあると思いますが、あの状態で 95km/時は普通という事でした。 勿論、遅い方が良いに決まってますが、滑る時には何キロでも始まります。 アメリカと日本の高速道路事情が違いますし。 尚タイヤはオール・ウエザーでした。


   今度は韓国のキア製。 硬めだが、ハンデイの乗用車タイプより運転しやすかった。 フロント・ピラーが太く、角度が緩いので視界は狭い。


       事故現場は州境から15分位の所。  もうアイダホ州です。 1時間も走ると、雪が降ったのが嘘みたいです。


    景色も右側(東)が拡がり始め、だいぶ変わってきました。 シアトル方面に行くユニオン・パシフィック鉄道の本線。


       東側                               西側


                    川なのか貯水池なのか。




       ウシ、ウシ、ウシ・・・です。           一瞬、雪がちらつきました。


       白い帯は散水装置からの水です。                                    どこまでも、どこまでも、


      中: 突然崖が見え、驚かされました。 背景は多分、アイダホ・フォールズ市(人口約5万7千)でしょう。   右: ツイン・フォールズ


 感じの良い街でした。 お馴染みのファースト・フードでハンバーガーの昼食。 ここからローカルに入り、延々と450km前後を走り通す。
左: 踏切。 X が踏切サイン、その間にツインの警告灯。  右: このトラック、70マイル/時の定速で走っており、つかず離れずを決め込みました。 まさか、このままネヴァダ州迄一緒とは。

知らない所を走る時はトラックの後が一番。 小さな集落でも地方政府(村とか)があれば制限速度は45マイルか、それ以下もあり、サインを見落とすと大変な事になる場合がある。

交通違反の罰金は、その市町村の収入となる(日本でもそうすれば違反切符の発行が増え、意識の低い運転者の数が減るし、交通対策もその自治体で始める事ができると思うけど)。 後程、そこの裁判所に出頭して申し開きをするか、郵送で罰金を払う事になるが、旅行者の場合、罰金を払う迄、留置場と言う事もあり得る。

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